インプラント

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インプラントを入れた患者が高齢になった時の問題点

私は以前、訪問診療をしている歯科で歯科助手として勤めていた事があります。
訪問診療とは、病気や障害で寝たきりの患者さんの入院先や施設、自宅などに訪問して治療をするのですが、やはり一番多いのは寝たきりの高齢者の患者さんでした。
義歯の調整や新調で診療の依頼が来ることが圧倒的に多いのですが、虫歯や歯周病などによるトラブルで依頼が来ることももちろんあります。
特に自宅で介護されている場合、口腔ケアまでは難しかったり、胃ろうで栄養を摂取してらっしゃったりすると口腔ケアは必要ないと思われていたりするので、歯周病のトラブルというのも実はかなり多いです。
日本人の多くは歯周病で歯をなくし、高齢者の多くは大きな義歯で生活されていると、先生はいつも患者さんに説明していました。
インプラント治療は比較的新しい治療方法ですが、ごく稀にインプラントの治療を受けた後に寝たきりになってしまった患者さんもおられるのです。
そういう患者さんが口腔ケアがおろそかになり、トラブルに発展するケースもありました。
虫歯や歯周病といった病気は、歯磨きで予防する事が可能です。
正しく歯ブラシ等の口腔ケア用品を選ぶ知識と、正しいブラッシング方法を知っていれば、一生自分の歯で暮らすことは夢ではないそうです。
先生はよく「人生240歳まで生きないと、老化で歯を失うことはないという説があるんです」と患者さんに語っていました。
インプラントは、人工の歯ですから、虫歯にはなりませんが、歯周病にならないように適切なケアと、正しいケアが出来ているかどうかの点検も兼ねた定期健診が、インプラント治療後には必須であると言えます。
元気なうちは良くても、寝たきりになって誰かの介助が必要な生活になってしまったら、自前の歯よりも細やかなケアを介護者が継続できるかというと、かなり難しいのではないでしょうか。
認知症の患者さんの中には反射的にかなり強く噛んでしまうような方もおられます。


一度ある施設から治療の依頼があり、訪問した時のことです。
施設の介護士さんは、「歯茎が腫れていて出血がある」とだけ確認しておられましたが、歯科医が診ると、腫れた歯茎に埋もれていましたが、インプラントのスクリューが見える状態になっていたのです。
つまり歯周病で歯茎が後退し、歯の根の部分に該当するスクリュー部分が露出していたのですが、歯茎が炎症を起こして腫れあがったために、素人目には見えなくなってしまっていた、というような状態です。
レントゲンを撮ると、もう今にも抜け落ちてしまいそうな状態でした。
これは、施設の介護士さんが口腔ケアについて熱心に勉強しておられた方だったので気付いたようなケースで、ご本人がお元気なら自覚症状もなく気付かなかったかもしれなかったそうです。
そのような熱心な介護士さんがおられる施設でも、やはり自力で口腔ケアが出来る状態の利用者の方には、ご自身で管理してもらうのがリハビリ等を考慮しても望ましいことなので、完全に予防するのは難しいのだと思います。
このようなケースを見てきて、インプラント治療の最大の問題点は、老後あるいは何らかの後遺症で介護が必要な状態になった後なのだと考えさせられました。
義歯やブリッジと違って、使用感の良さが最大の特徴であるため、急速に普及した治療法ですが、その年代が高齢者になり介護が必要な時代になったら、その治療やケアがビジネスとして急速に普及するようになるのかと思うと、少し複雑な気持ちになります。
口腔ケアについて、正しい知識を身に付け、歯科で健診を受ける習慣をつけることで、結局は治療費や時間の節約になるのですが、そういった予防治療が保険診療に適用されれば普及するのにな、と思います。