インプラント

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歯周病患者のインプラント手術はリスクが高い

「老化によって歯が抜け落ちるには、240歳まで生きる必要がある、という説があります。では、多くの高齢者が入れ歯を入れているのは何故か。それは多くは歯周病や虫歯などの病気で歯を失っているからです。そして歯周病や虫歯というのは、歯磨きで予防が出来る病気なのです。」この話を聞いたとき、私は正直驚きました。
歯は老化で抜け落ちていくもの、高齢者が入れ歯を入れるのは仕方のないことだと思い込んでいたからです。
介護施設で働く私は、入所者の口腔ケアについて、訪問歯科で診療されている歯科医師の方の講演会に参加する機会がありました。
そこでこの話を聞いたのです。
私は実は奥歯が1本ありません。
それを補うために、インプラントを入れていました。
ですから、介護者としてだけでなく、自分の身に当てはめて話を聞き入ってしまっていました。
「歯周病でまず1本抜歯した。しかし歯周病だとその周囲の歯も一緒にある程度進行しているはずなので、その欠損した1本を補うために両隣を犠牲にしてブリッジにしてしまうと、本来は3本にかかる圧力が2本にかかってしまうことになり、弱っている2本の歯はさらに加速度的に弱っていく。そうやって、どんどん歯がなくなっていき、入れ歯になる。」そう聞いてぞっとしました。
私も1本歯を失った理由は歯周病だったからです。
しかし私はブリッジではありません。
インプラントを入れました。
圧力の問題はクリアなはず。
少し胸をなでおろす気分でした。
講演会が終わり、個人的に先生に質問が出来そうな機会がありました。
そこで話を伺ってみたのです。
「ブリッジでなくインプラントではどうでしょうか」と。
その先生は眉をひそめてこう答えました。
「インプラント治療は出来てからまだ年数が浅いので、今の高齢者の方には該当者が少ないかと思い、説明を割愛してしまいましたが、おられるのですか。歯周病の方には私はお奨めしていないのです。もちろん、有効な治療法だとして奨めていらっしゃるドクターがおられるのは知っていますが、私が歯周病で抜歯するとなれば、リスクを考慮して他の選択肢を選ぶからです。」


歯周病の患者にとって、インプラントはリスクが高い。
私は顔面蒼白になっていたんじゃないかと思うくらい、気が遠くなりました。
どうしてリスクが高いのか、こう説明して下さいました。
そもそも、手入れが悪いから抜歯が必要になるほど歯周病が悪化したわけである。
手入れをきちんとする人であれば、そうなる前に歯医者にも行く。
治る病気ではないが進行のスピードを格段に落とす事が出来るのに、そういう対策を講じなかった。
そういう人が、自分の歯よりもずっと細かいケアが必要な人工物を一生持たせることが出来るとは考えられない。
お金と時間を毎日かけてケアする必要があるけれど、それが出来る人なら、そもそも歯周病をそこまで放置しないだろう。
なるほど、とても納得がいってしまいました。
私は口腔ケアにお金をかけたりしていません。
歯ブラシも歯磨き粉も、一番安いものを買います。
朝と就寝前に歯磨きしますが、テレビを観ながらです。
講演会で学んだように、きちんと磨けていれば朝の口の中はさほど不快感が無いはずなのに、私は不快感があるので食事の前に歯を磨く始末です。
しかも、かかりつけの歯医者から来るメンテナンスの通知ハガキは広告だとばかりにすぐ捨てていて、手術後メンテナンスに行ったことなどありませんでした。
せっかくお金をかけて入れたインプラントなのに、また痛く辛い思いをしなければならないのかと思うと、ぞっとしました。
それから私は心を入れ替え、口腔ケアのために3ヶ月に1回は歯医者に通い、そこで指導を受けたとおり歯ブラシと歯磨き粉を選び、歯磨きに時間をかけて鏡を見ながら隅から隅まで清潔にするよう心がけることにしたのです。
きちんと磨けていれば、朝の口の中はさほど不快感はないものなのですね。
物心ついてからは、初めての経験じゃないかと思います。
インプラントにはこういったリスクもあるようですが、しかしそれはきちんとした口腔ケアの知識と、それに惜しまぬ手間をかければ回避出来るリスクだと知りました。
あの先生との出会いに感謝です。